【はじめに】
11月3日をもちまして、「はならぁと こあ」の会期が終了したと共に、10月10日から「はならぁと ぷらす」の開幕から1か月弱にわたる、今年の「はならぁと」は本会期をすべて終了いたしました。
 
今年はメインエリアが昨年よりも南下しての開催となりましたが、会期中はたいへん天候に恵まれて、多くのみなさまに奈良の各エリアにお越しいただき、心より御礼申し上げます。そして、今年の「はならぁと」開催に向けて、準備期間から会期本番まで約半年間にわたって多大なご尽力をくださったキュレーター、作家をはじめとした出展者のみなさま、サポーター、各会場の所有者および地域のご担当者のみなさま、事務局スタッフ、奈良県庁のご担当者、実行委員会の本部側のみなさま、そして外部からご支援いただいた多くのみなさまに、深く感謝申し上げます。
 
今年の「はならぁと」は、開催エリアの決定やキュレーター・作家の選考・募集を、例年よりも前倒しで進められたこともあって、アート側と地域側共に現場にじっくりと向き合うことができ、芸術もまちも共にバランスよく楽しめる今年の「はならぁと」が実現できたと思っております。建物や地域の特性をしっかりと拾い集め、それらを再構成して表現されたキュレーターおよび作家の企画と、まちのありのままの姿を見せた地域側の企画。各エリアで展開された企画の数々は、「はならぁと」でしか作り出せない一体感とバランスが、例年では稀に見るかたちで現れたように思います。
 
一方で今年は、現場に関わる方々および来場者のみなさまから、例年以上に多岐にわたるご意見、ご感想が多数寄せられました。好意的な内容と同等に、提言、苦言的な内容も多々ありました。これまでの視覚的表現に重きを置く美術系中心から、今年は芸術全般に展示・企画の内容が広がり、鑑賞の上で視覚以外の要素が求められるようになったことに加え、今年のキュレーター・作家の意識の高さから準備段階の「プロセス」にも、「はならぁと」から生まれた表現として意義のある要素がふんだんに盛り込まれました。それらを会期前から発信することができていれば、より一層「はならぁと」の趣旨を理解していただくと共に、今年ならではの展示・企画の内容をより深く楽しんでいただけたはずでした。事前からこの状況を想定して、会期前からの情報発信にもっと力を注ぐべきだったと、私自身の力不足を痛感しています。
 
 
【「プロセス」をめぐる今年の「はならぁと」の特徴】
その「はならぁと」における「プロセス」とは、展示や企画をかたちにすることに向けての、開催エリアや会場の建物へのリサーチやアプローチから、またそれらの行動の際に触れる地元の人々との交流・対話・交渉までも含まれます。特に「はならぁと」は、地域側との密接さが比較的強いアートプロジェクトとして、当初から「サイトスペシフィック」という言葉が多用されてきた経緯があります。しかしその解釈は、会場となる建物の空間と作品との調和という表層的かつ視覚的な提示に留まるのではなく、歴史や風土、現状に対して独自の視点を向けて、展開される展示や企画がさまざまな概念の再構築と再解釈をいかに各々の思考の中に促していくかという役割まで広がっているのが、昨今の現場の動向でもあります。
 
特に今年のキュレーターのすべての企画は、表に見せる地域の要素を掘り起こすのみならず、何をあえて隠し、何に距離を置くかによって、芸術としての質を担保しようと努め、それらが一定レベルの完成度で成立していました。しかし、プロセスを含めて作品化されていたという状況になり、プロセスへの関与・認識の有無、また時間限定の企画なども目立ったこともあり、鑑賞の時間帯によって、鑑賞時および現場の印象に差が生じる結果となりました。これは「地域アート」によくある傾向ですが、「参加する/共犯関係になる」ことがその場を楽しむ最も効果的な要素とされています。しかし、現場に関わる以上の人々が訪れるこうしたイベントにおいては、鑑賞者側の解釈の多様性が前提の上で、鑑賞のポイントを多角的に誘導する仕組みを用意することが必要です。それが、今年の「はならぁと」では、結果として準備段階の「プロセス」を発信して、広く周知していく言葉であったと思います。つまり、今年多くのみなさまが「はならぁと」を訪れて、芸術とまちを楽しんでいただいた要素以上の面白さが、まだまだ表に現れていない、まだまだ伝えきれていないという現実に私自身が思い知らされています。
 
内観を覆っていた新建材をはがし取った今井町の中野町家の建物へのアプローチや、宇陀松山のまちなみの各所に独自ポスターが多数貼られていった行為など、作品への直接的な制作や加工のみならず、まちそのものへのアプローチが企画作りの中で随所に取られました。一見、地域側とのコミュニケーションを目的としたように思われるこれらの行為ですが、地域色の強い要素が芸術としてのコンセプトの根幹に結びつける目的が明確にありました。まちにある様々な要素が遠心力的に、芸術の表現にフィードバックされていく。そこには単純な行為と結果のみで捉えるべきものではなく、「プロセス」として概念の変化の過程をどのように経たのかを考えることによって、地域と芸術の両者の理想的な結びつきを考える契機となると、私は今年の状況を振り返って、そのように思っています。
 
 
【今年の総括を進めていくにあたって】
私のこれらの視点さえも、「はならぁと」全体の一部のものに過ぎないのは重々承知しています。今年の現場で起きたさまざまな「プロセス」を、アート側の視点で読み解き、分析することを通じて、常々論点が多岐にわたってきた「はならぁと」の全体の構造との整合性や相違点を洗い出す機会にもしたいと考えています。昨今の「地域アート」の議論の高まりとともに、芸術側にとっては、自分たちの表現の領域を担保しながら地域と関わる意義を考え続けること。地域側にとっても、そもそもまちづくりは継続することが前提にあること。双方にある継続の「プロセス」を常に意識し続けていかなければ、こうした地域とアートの関係性が問われる地域芸術祭は成り立ちません。試行錯誤を繰り返しながらすでに5年の経験が積み上げられ、多様性でもって枠組みを保持してきた「はならぁと」ですが、自然と「プロセス」へと意識が集約された今年の結果を踏まえて、そろそろ「はならぁと」のあり方としての「システム」においても、一定のレベルで明確な枠組みを示す時期に達したのではとも思います。
 
この多くの人々の渾身の力が結集して作り出された今年の「はならぁと」の成果を通じて、これからの年度後半は伝えきれなかった「プロセス」の部分を考察して、改めて「はならぁと」の本質や意義を深く掘り下げて考える機会にしていきたいと思います。その最初の段階として、12月6日(日)に宇陀松山で実施する今年の報告会での発表で、まずはその大枠をお話ししたいと思っています。年末のご多忙な時期の開催となりますが、みなさまのご参加をお待ちしております。


「奈良・町家の芸術祭 はならぁと」アートディレクター 山中俊広

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『はならぁと 2015』第一回 報告会(12/6)
[日程]平成27年12月6日(日)
[時間]12:30-17:00(12:00-受付開始)
[場所]宇陀松山エリア 千軒舎
    
(※近鉄榛原駅から大宇陀行きバスに乗り「大宇陀道の駅」下車。徒歩約1分。)
[定員]50名程度(予約不要・途中参加、退席自由)

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Comment
はじめまして。大阪に住んでおります、井浦と申します。今年初めてはならぁとを拝見させていただきました。私自身は古い街並みが好きで家内と一緒にあちらこちら見て回っていたのですが、とある公開古民家の事務局長さんからはならぁとの開催をお聞きして、今回参加させていただきました。時間の都合で、宇陀と今井のみの参加となりましたが、荒削りながら、アーティストの皆さんの希望と熱意がひしひしと伝わるイベントだったと感じています。中でも、宇陀のマルカツさんで開催されていた皆さんとお話しをする機会があったのですが、朽ちかけた家屋を自分達で修理して、チームで住み込みで臨んでいらっしゃる姿勢には溢れるエネルギーを感じ、圧倒されました。宇陀では、その後移住を決意された若者がいらっしゃるとか。はならぁとのムーブメントの強力さを物語る出来事だと舌を巻いております。
私は職業柄、建物の補修や清掃などのメンテナンスに関わる事が多いのですが、知識や技術を超えたパワーを皆さんから得たような気がしています。

乱筆ながら、思いつくままお便りさせていただきました。来年からも引き続き応援しています。どんどん大きく盛大なイベントになりますように。
  • 井浦 聖
  • 2015/12/24 16:38
井浦様、初めまして。奈良・町家の芸術祭 はならぁと 事務局です。
コメントへの返信が遅くなり、大変申し訳ございませんでした。

この度は、奈良・町家の芸術祭 はならぁと 2015の今井町エリアと宇陀松山エリアへ足をお運びいただき、誠にありがとうございます。そして、熱いご感想をいただき、大変感動しております。マルカツチームのキュレーターやアーティストの皆さんの力、メッセージには、宇陀の町も、はならぁとも、大きなパワーをいただきました。
これからも、応援してくださる皆様の想いにお応えできるよう、まちと共に努めてまいります。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。

奈良・町家の芸術祭 はならぁと 事務局 飯村
  • はならぁと事務局
  • 2016/03/03 19:02





   

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